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自然の中に自由はない [日々のくらしから 家族、社会、自問]


 最近ニュースを見る時、気が重くなります。唖然としてしまうことがあります。常識なんてことも今はなくなっているんだと思います。責任なんていうのも感じないのかもしれない、どこか成り行きまかせ、自然まかせです。タウンミーテングは裁判制度や教育制度について、有権者、市民の意見を直接聞く場として設定されたようですが、実際はあらかじめ用意された発言者に頼んだ発言だったことが発覚しました。それについて担当大臣がどう責任を感じますかと、記者に問われて、責任ってなんですかと反対に質問、自分の考えはノーコメントでした。
 本当に責任なんて分からないし、感じていないようでした。

 国政選挙で投票する人は有権者の半分くらいのようです。さらに小選挙区制になって、半分くらいの人の票は無効になる。議員は有権者の割合でいうとかなり少ない人によって選ばれるわけです。それもどれくらい、その人を知っているかと言うとほとんど知らない場合のほうが多いのではないでしょうか。この人なら絶対日本の国政を托せると思う人を見つけ出すことはかなり難しいと思います。選挙も政治も問題の深刻さに比べ形ばかりのものになっているということはないでしょうか。
 でもそうだとしたら、それは国民の問題だと思います。 

 最近読んでいた本(「二十一世紀の倫理」)にこんな言葉をみつけました。

 ー 自由があるというテーゼと自由がないというアンチテーゼが両立する。自由がないとして物事を見るべきだし、また自由があるとして物事をみるべきである。

 自由という意味を何度も繰り返し考えていましたので、この言葉は関心がありました。
 二イルは「自由の子」初め、その著作の中で、自由と放縦の違いについて書いています。自由は自律であること、また自分の権利を尊重することと相手の権利を尊重することにおいて、対等、ギブアンドテイクである、また気付くという問題だということを言っていますから、二イルも自由を思いのまま、自分の意志のままということではない、むしろ思い通りにならないのが社会であり、人の生涯でもあるということを前提にして使っていると思います。自由というのはどういう意味なのでしょうか。

 柄谷氏は「二十一世紀の倫理」の中で、カントの考えを紹介して、さきにあげた「自然のなかに自由はない」ということを言っています。 
 わたしたちが普通自由といっている意味は自分の意志で何かを選んだり、決めたりしていることをさしていますが、たとえば、どこの高校を受験するか、どこの大学を受験するかなど、自分できめていると思っていますし、社宅に入るか、思い切ってローンを組んでマンションを購入するか、老親の介護をどうするか、など、自分で決めているつもりですが、すこし考えれば、その決定も社会的な因果性の中のことで、原因によって規定されない純粋な自由などではないことがわかります。本当はもっと八頭身にうまれたかったけれど六頭身だなど、すべてこの自然必然性の中に人間はおかれていて、原因によらない主体などはないというのが分かります。 自然原因によって決定されているが、同時に自由であるとしたデカルトに対し、スピノザは自由などはないと考えたようですが、カントは「個々人は諸関係の所産でありながら、それを超越したかのようにふるまうことができる。認識しようとする意思のみが自由である」と考えたそうです。
 自由をカッコに入れたときに現象(自然必然性の世界)を見出し、自然必然性をカッコに入れたときに自由を見出すという柄谷さんの説明はとても納得がいく説明だと思いました。
 カントは道徳性を『自由である』ことにのみみいだしたといいます。自由がないなら、主体がなく責任がないことになりますから。
 自由であれ。自然的、社会的因果性をカッコにいれ、自由であることを意志することによってのみ、自由が生まれる。
 どこに、どのような両親のもとに、いつ生まれるかなど、自分の意志できめて生まれたわけではありませんが、そのことを引き受けるのは、自分に自由があったかのように、自ら始めたかのように考えることによって主体となると考えることが出来るように思います。
 主体的、自由になるということは現実生活の中でどれだけ自由がないかとは別であり、自由であれと自分に命令することによって、主体としての責任も生じる。そう考えた時、二イルのいう自由の意味もはっきりしたように思いました。

 わたしたちは半分、自然な必然性の中で物を考えているから、自由であれと自分に命令することはありません。自由であれ、真に主体であれということはとても大切なことのように思いました。


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風船かずら

アルマ様ナイスありがとうございます。
by 風船かずら (2014-01-17 17:52) 

風船かずら

さらまわし様、過去記事へのナイスありがとうございます。
by 風船かずら (2014-04-25 22:19) 

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