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大人になることのむずかしさを読んで  3 [日々のくらしから 家族、社会、自問]

 なぜ現代モラルハーザードともいわれるようなことが進行するのでしょう。ニュースを見るのが怖いし、暗い気持ちにもなったりします。しかし、暗い気持ちにばかりなっているわけにはいきません。未来はもっと明るい希望のあるものでなければならないと思います。未来の彼らが平和のうちに力強く生きていけることを願わずにいられません。

 話を「大人になることのむずかしさについて」の感想に戻そうと思います。

 この書物のなかで河合さんは厳密に言えば大人といっても日本的大人なのか西洋人的大人なのかという問いが成立するほどこの問題は難しいということを言われています。日本人の自我の形成と西洋での自我の形成にはちがいがあるからで、日本人がその自我を作り上げていく過程で、西洋人とは異なり、はっきりと自分を屹立しうる形で作り上げるのではなく、むしろ自分を他の存在のなかに隠し、他を受け入れつつ、なおかつ、自分の存在をなくしてしまわないという複雑な過程を経てこなければならない。しかし、それが、他にたいする配慮のあまりに常に他の人はどう考えているのか、他の人に笑われないようにしようということが強くなりすぎて、西洋人からは「自我がない」というようなことになってしまいかねない。しかし両者のあり方は一長一短であり、軽々しく判断を下すべきではないと筆者は考えていると述べていらっしゃいます。大人になるということの中には絶えず自分としての自己の在り方と相手との関係ということがあるわけで、西洋人の他と切り離して個として確立しており、自分の存在を他に対して主張していく西洋流も行きつまりが見えてきて、今最も大切なことは従うべきモデルがないということを、はっきり認識することではないかという河合さんの指摘は迷い悩み苦しんでいる若者にとっても大人にとっても考えるうえで重要だと思いました。そこから自分たちの課題、やるべきことが見えてくるのかと思います。

 日本人的な自分のつくり方にしろ、西洋人的な自我の形成にしろこれからの時代がすべての人間の尊厳が守られ、平和の裡に自分を成長させながら、自己実現が可能なような世界であってほしいと願うのですが、人にできることは自分についてにつきるのでしょう。

 先ごろ、NHKのクローズアップ現代で若い女性の貧困がとりあげられていました。若い女性の多くが不正規労働で、仕事先も不安定、賃金が安く、労働時間も長い中で子育てをしたりしています。仕事と育児と経済的貧困などの中でぎりぎりの生活をしている人も多い。希望なんてない、夢もないという若い女性たちの言葉。彼らがこれから子どもを育て、社会の中心になる人たちであることを考えたとき、若い人たちの前に立ちはだかる壁の大きさ、彼女たちが背負っている課題の大きさに心がいたくなりました。人として成長していくことと社会の成長、特に経済的成長とはどんな関係にあるのでしょう。本来は別の問題だと思いますが、関係するとしたらどんなふうに関係するのか考えてみることが重要だと思いました。生きるために食べなければならない、そのことが自立や自己決定を阻んでいるということはないでしょうか。食べることができない、命を維持することが難しいという状況があればあるほど心を拘束する社会の支配の仕組みは強固になるのではないかと思うのですがどうでしょうか。

河合さんは「この本を大人がどうすればよいかという視点より、青年たちはいかに苦悩しているかという視点で書き進んだ。我が国の青年の直面している問題を共に考えていこうとするものである」といわれています。この本を読み終わって、若い人たちの一つ一つの出来事にこせこせしないでゆっくり、ゆとりのある気持ちでいたいと思いました。


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風船かずら

haku様訪問ありがとうございます。

ナイスありがとうございます。
by 風船かずら (2014-02-20 12:20) 

つなみ

うーん、最近の私の気づきは、あらゆる些細なことにいたるまで、
相手を微塵も支配しないで調和できることかな、と思います。
うふっ( 〃▽〃)ありがとう。
by つなみ (2014-04-28 12:48) 

風船かずら

つなみ様、コメントの返信が遅れてすみません。メインブログを別にしていたので見ていなかったのです。時々心変わりをして混乱してしまうのです。他人を支配しない、とても難しいことと思いますが大切なこととわたしも考えているところです。
by 風船かずら (2014-05-16 17:19) 

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